介護現場で職員間のいじめがある。その加害者の多くは<女性>ではないか。
【私の数少ない経験で言い切るのは避けたいが、意地悪な職員と言えば、女性しか思い浮かばぬのはなぜか。たまたまわが運が悪かったのか、それとも。 もろみ五郎】
職員A「またまた、思い切り偏見の塊みたいな内容で始まったな」
職員B「確かに。でもねえ、これについては五郎氏の肩を持ちたい気がするんですよねえ。ぼくも強烈ないじめに遭いましたけど、女性職員なんですよね、これが」
職員A「おばさんかな」
職員B「いやそれが、けっこう若手でしたねえ。状況の説明が難しいから内容は省きますけど。こっちも大声でやりかえしちゃいましたよ」
職員A「私もあるんだなあ。夕方、就寝の順番を間違えたんだが、かなりやられてしまったよ」
職員B「五郎氏なんて、そうとういじめられてるでしょ。老健・特養・GH・有料と、各施設でまんべんなく」
職員A「五郎氏はまじめ過ぎるからなあ。つい、相手も調子に乗るんだろう」
もろみ五郎「川崎市高津区の有料では、あんたとは口きかぬとか何とか、露骨な態度で長期間責められたものである」
職員B「そもそも、介護の現場って、女が強いんですよねえ」
職員A「そうなんだな。介護士の元祖というか、もともとの形は、家事育児の一段落した主婦の片手間仕事だったんだよな」
職員B「確か<寮母さん>とか言われてたんですよね、昔は」
職員A「そう。要は女の職場だったってわけだ。そのころから半世紀ばかり過ぎて、法整備もされて世の中の認識も進んだがね、基本的な空気は変わってないんじゃないか、って気がするんだよな」
職員B「同感ですねえ。まあ、全国くまなく知ってるわけじゃないですから断言は避けますけど、たぶん、どこの現場に行っても強い女性職員がいそうな気がしますよね」
職員A「いるだろうなあ。言いきっちゃ悪いんだが。で、なぜだろかって考えてみたんだがね、一つには、あ、あくまで一例だよ、既婚女性が多いだろう。まあ、これも思いっきり推測になるんだが、既婚の場合、夫の方が稼いでいて、彼女自身は家計の主力じゃないと思うんだな。つまり、男の世界の常識として、家計は俺が支えてるんだ、みたいな意識があるだろう。これが希薄なんじゃないかなあ」
職員B「それは言えるかもしれないですね」
職員A「私たちは子供のころから、男は仕事・女は家庭、と言われて育ったほぼ最後の世代だろう。その認識で言うと、介護現場で幅を利かせている女性は、家庭じゃあいかわらず第二位の財布の持ち主なんだよな」
職員B「だから気楽でのびのびやれる、ってことですかねえ」
職員A「そうなんだな。とりわけ、管理者がそうだった場合、その職場の空気は実に微妙なものに支配される気がしてならんね」
職員B「微妙なものって言うと」
職員A「つまりだな、変な言い方したらだよ、たんか切ってケツまくっても、ダンナの稼ぎがあるからなんとかなるだろう。もちろん、普段はこんなの意識してないと思うよ。でも、根本姿勢の中にしっかりと据えられてるんだよ、きっと。だから、いわゆる ”好き嫌い” でものごとを判断して、嫌なものは嫌、キライなことはキライ、ってはっきり言いきったりできるんだろう」
職員B「なるほどねえ。男は家計の主力だから、それほど思い切った態度に出られませんからねえ。それが、気に入らない男性職員を餌食にするという空気を作り出している、と」
もろみ五郎「仮説としてはなかなか良かろう。まあ、本来ならば、それを検証してゆかねばならぬところだが」
職員A「まさか、そこまで細かくやらないでしょ」
もろみ五郎「やらぬ。ひとまずこれでおしまいである」
(了)1474字