老後の不安と言えば、お金。でも、健康はどうなの。
【<老後 不安>とキーワードを入れて探せば、出てくる情報の多くは経済事情に関するものである。老いを迎えるに当たり、懐が気になるのは当然であろう。だが、心身の健康状態についての情報が上位に出てこないのはなぜか。体が丈夫なら働き続けることもできるのだから、お金に劣らず重要な条件のはずではないか。老後不安の第二位が隠れてしまう理由を考えてみたい。 byもろみ五郎】
老後不安=お金なのか。アンケート結果に惑わされるな。
初老男A「冒頭で五郎氏が『老後不安の第二位』と言ってるんだが、ここが実はクセモノなんだよな。アンケートの調査主体によって結果が変わる。多くは金融関連の企業や団体による調査だからな、当然、お金が最上位にくるわけだ」
初老男B「そうなんですよねえ。よく読んでいくと、老後不安というより、 老後資金の不安 という視点から始めてるものが目立つんですよ。AIで調べた内容では、自分の健康とか、自分が病気にならないか、といった健康面が第一位なんですよね。ところが、検索上位に出てくるのはお金。どうしてでしょうね」
初老男A「老後不安の基本的なことについては、マイナビが運営するミドルシニアマガジンがわかりやすい。確かにお金と健康が一位二位なんだが、健康ってのは、医療費などの経済事情と分かちがたく結びつくんだな。お金の不安を差し引いて、純然たる健康不安だけにすればどうか」
初老男B「そういう視点に立つと、健康の順位は下がるかもしれませんよね」
初老男A「まあ、下がるかどうかは何とも言えないが、ただ、お金についても同じ視点で見なければならんだろう。つまりだな、健康面に費やす資金というのを除外すれば、お金の必要度も下がるんじゃないかって思うんだがね」
初老男B「そうなんですよねえ。結局、一位と二位は不可分の関係にあるってところですかね」
初老男A「そうだろ。そうなんだよ。ところがだな、ただお金のことばかりが出てくる。自分や家族の健康を気遣う人はそうとう多いはずなのにね。朝日新聞が運営するReライフ.netでは、アンケート結果だけなら健康不安が圧倒的だ。それなのに、記事は資金の不安へと読者を誘導する」
初老男B「思うにですね、健康面とりわけ肉体造りに関しては、かなりの情報があるでしょう。体作りは全世代の関心ごとですからね。だから、<老後 不安>という切り口で出てこないのは、単にキーワード選択の問題かなって」
初老男A「そうなんだがね、試しに<老後 不安 健康>と入れてみると、面白いことに、ハウス食品のハウスダイレクトが上位に現れる。その記事の中では、まずはアンケート結果がお金と健康でしたよ、と来て、次には食生活改善の重要性なんだな」
初老男B「そうなんですよねえ。つまり、調査主体が何をしようとしているかによって、その情報の核となる内容が違ってくるってことなんですよね。だから、自分の老後の健康面に不安があるのなら、具体的に<老後 病気>とか<老後 肉体>とかいうふうに検索すればいいんですよ。こうすれば、体に関する情報が得られますからね」
老後の健康不安。その理由は何か。
初老男A「先に話した通り、健康不安は資金不安と密接に結びついている。それならば、病気になったり、施設に入らなければならなくなったりしたときのためのお金が潤沢にあればいいのか。それで健康不安は解消されるのか、と言えば違うんだな。いくら金があっても、体が弱った自分を他人に委ねることには代わりがない。つまり、お金と同等なくらい、或いはそれ以上にわたしたちを思い悩ませるのは、 人の世話になりたくない ってことなんだよな」
初老男B「そうなんですよねえ。そこがまさに肝なんですよ。ぼくたちは介護士ですから、日々、職場でお年寄りのお世話をしてますよね。そんなとき、必ず心に浮かぶのは(自分もいつかこうなるのかなあ)ってことでしょ。施設入居者を悪く言ってるんじゃなくて、実際の話、(明日は我が身か)と感じるのは普通だと思うんです」
初老男A「そうだよな。老人ホームの入居者は、ほぼ全員、実は自宅に帰りたいと思ってるはずなんだ。誰だって自分ちがいちばんだからね。でも帰れない。一人で暮らせるほどの健康状態じゃないんだからな。一方、最期まで自宅で暮らした人の例もたくさんある。もちろん、周囲の人間関係が肝心だがね」
初老男B「ところがですねえ、<老後 自宅暮らし>と入れて探すと、出てくるのは住宅業界か金融業界の記事なんですよね。結局のところ、何らかの商品やサービスの購入に誘導する、或いはその気にさせるような内容のものが上位に来ちゃうんです」
初老男A「まあ、そういうことだな。前の章の話で言うなら、金融ってのは儲かる商売だろ。世界中の企業がたんす預金を狙ってるんだからな。情報主体にとって利益の上がる話しか上に出てこないってわけだ」
初老男B「そういうことですよねえ。例えば認知症の場合、企業の関心は 予防 でしょ。すでにそうなってしまった人より、いつかそうなるんじゃないかと不安に思ってる人のほうが、いい顧客になり得ますからね。この観点で言えば、まだ老人になっていない人たちを対象にしたほうがずっと儲かるわけですよ。だから、真剣におのれの健康を不安視してる人の側に寄り添った記事が上に上がらないんでしょうね」
初老男A「そうなんだよな。多くのサイトが広告料で成り立ってるのが現状だから、検索する人に金を使わせようとするのはやむを得ないと思うしかあるまいね。だから、老後の健康に関する純粋な情報を得たいのなら、検索キーワードを工夫するか、中立的と思われる有識者の話を聞きに行くか、とにかく端末の前でただじっとしてるだけじゃダメだな。他人の世話になりたくなければ、今から行動を起こす。いい情報は石ころみたいに転がってはいないんだからな」
まとめ
初老男B「この直前に結論出しちゃいましたねえ」
初老男A「まあ、そういうことだな。まとめれば以下の通りだ。
1)ネット情報の多くは商品やサービスのひも付きである。よって、中立的情報を得たいなら、検索キーワードを工夫すべし。
2)web情報だけに頼らず、その他の媒体やセミナーなども活用して、良質な情報を探しに行くべし。
…といったところかな」
もろみ五郎「その通り。ただなんとなく探すのではなく、目的意識を明確にして、すぐ消費に結びつかぬよう気を付けることだ。金を使えばなんとかなる、と思ってはならぬ、無償または廉価で入手できる情報はごまんとあるのだからな」
(了)
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